サバニとは?
サバニレース復活の段取りがはじまったころ、アウトドア雑誌「SOLA」1999年春号にサバニの記述見つけました。サバニの説明としては、とても要領を得たものなので、許可を得て毎年引用させてもらっています。 この本の当時の編集長遠藤氏も第3回の大会には顔をみせてくれました。この記事の中で紹介されている自費出版『サバニ』の著者白石先生も毎回欠かさず、レースを見に来てくれています。このページの図とその説明は、全て白石先生の本から借用させていただきました。
サバニレース復活の段取りがはじまったころ、アウトドア雑誌「SOLA」1999年春号にサバニの記述見つけました。サバニの説明としては、とても要領を得たものなので、許可を得て毎年引用させてもらっています。 この本の当時の編集長遠藤氏も第3回の大会には顔をみせてくれました。この記事の中で紹介されている自費出版『サバニ』の著者白石先生も毎回欠かさず、レースを見に来てくれています。このページの図とその説明は、全て白石先生の本から借用させていただきました。
沖縄を代表する舟といえば、美しさとすぐれた性能において他を圧倒するサバニだ。伝統的な舟とはいえ、江戸時代の鎖国政策によって造船技術の文献はほとんど残存しないという。現在にわずかばかりに伝えられた技術をもとに、驚くべき機能を検証していこう。 (略)いにしえの海洋民族の末裔となる沖縄の漁師たちは、自慢を嫌う寡黙な性格だと言われている。ところが、サバニに関してはかなりの誇りをもっている。例えば、どこかのヨットなどが相当な距離を走り抜いたといった世間の話題がでると「たいしたものだ、サバニならともかく」といった話し方をするという。
●クリ舟とハギ舟の合体
イカダや動物の皮をはいだ革舟とともに、大きな木をくりぬいてつくった丸木舟(くりぬところからクリ舟と呼ばれる)は、先史時代から伝わる舟の原型だ。だが、現在に伝わるサバニは、姿こそ似ているものの、〈マルキンニ〉と〈ハギブニ〉というハギ舟とも異なっている。一見ハギ舟のようだが、船底部にはくりぬかれた材が用いられている。まるで、クリ舟とハギ舟が合体したあんばいだ。クリ舟は世界各地の文化にみられるが、大木が減って伐採ができなくなる地域からは姿を消していった。沖縄でも、1737年に琉球政府はクリ舟を禁止して、ハギ舟を奨励しているのだが、なぜ、舟底部にだけクリ舟の構造が残っているのだろうか。 沖縄を代表する舟として、サバニの名はよく耳にするが、語源からしてさだかでない。インテリアデザイナーの白石勝彦氏が「亡びゆく伝統的な舟づくりを後世に伝えることができれば」という意図から1985年に自費出版した『サバニ』に出会った。幾度も船大工に取材したうえで、サバニをわかりやすく解き明かしたこの一冊にしたがって、特徴を紹介してみよう。
イカダや動物の皮をはいだ革舟とともに、大きな木をくりぬいてつくった丸木舟(くりぬところからクリ舟と呼ばれる)は、先史時代から伝わる舟の原型だ。だが、現在に伝わるサバニは、姿こそ似ているものの、〈マルキンニ〉と〈ハギブニ〉というハギ舟とも異なっている。一見ハギ舟のようだが、船底部にはくりぬかれた材が用いられている。まるで、クリ舟とハギ舟が合体したあんばいだ。クリ舟は世界各地の文化にみられるが、大木が減って伐採ができなくなる地域からは姿を消していった。沖縄でも、1737年に琉球政府はクリ舟を禁止して、ハギ舟を奨励しているのだが、なぜ、舟底部にだけクリ舟の構造が残っているのだろうか。 沖縄を代表する舟として、サバニの名はよく耳にするが、語源からしてさだかでない。インテリアデザイナーの白石勝彦氏が「亡びゆく伝統的な舟づくりを後世に伝えることができれば」という意図から1985年に自費出版した『サバニ』に出会った。幾度も船大工に取材したうえで、サバニをわかりやすく解き明かしたこの一冊にしたがって、特徴を紹介してみよう。
●スピード重視の機能美
実は、クリ舟のように肉厚で丈夫な船底は、珊瑚礁が多い南の海のリーフの中や海岸での漁で効果を発揮するという。
船底部が重いことにも理由がある。南の海の通常のカヌーには、アウトリガー(支え木)が舟の両側などについていて安定を保っているが、サバニにはアウトリガーがない。強い風や波で転覆する場合があるが、船底が重いために容易に元にもどせるのだ。
スタイルは、舟長と舟幅の比率は通常のヨットなどが1対3であるのに対して1対6と高く、より細長い。丸木船のように丸みのある舟形に流麗な線で構成され、さらに、船首波と船尾波による造波抵抗を低下させる。さらに、船尾部分は通常の舟よりもせりあがっていて、正三角形に近い船尾板でまとめられている。
せりあがった船尾は追い風のときに追い波をかぶらない。また、転覆して裏返ったときには逆に不安定になり、起こしやすい。正三角形の船尾板も、手で舟を回転させやすい。起こしてからの排水には、強い傾斜で後ろに傾いて船尾板がきいてくる。大波を利用して、船首をもちあげると同時に人の体重をかけて船尾を押し上げて勢いをつけ、舟の中の水を船尾からはきだすのだ。走行中の安定性を犠牲にして、転覆を恐がれずに走り続けるスピード重視の発送。海に投げ出されても作業がくにならない、水温が暖かい暖流の地域の特質であろう。
実は、クリ舟のように肉厚で丈夫な船底は、珊瑚礁が多い南の海のリーフの中や海岸での漁で効果を発揮するという。
船底部が重いことにも理由がある。南の海の通常のカヌーには、アウトリガー(支え木)が舟の両側などについていて安定を保っているが、サバニにはアウトリガーがない。強い風や波で転覆する場合があるが、船底が重いために容易に元にもどせるのだ。
スタイルは、舟長と舟幅の比率は通常のヨットなどが1対3であるのに対して1対6と高く、より細長い。丸木船のように丸みのある舟形に流麗な線で構成され、さらに、船首波と船尾波による造波抵抗を低下させる。さらに、船尾部分は通常の舟よりもせりあがっていて、正三角形に近い船尾板でまとめられている。
せりあがった船尾は追い風のときに追い波をかぶらない。また、転覆して裏返ったときには逆に不安定になり、起こしやすい。正三角形の船尾板も、手で舟を回転させやすい。起こしてからの排水には、強い傾斜で後ろに傾いて船尾板がきいてくる。大波を利用して、船首をもちあげると同時に人の体重をかけて船尾を押し上げて勢いをつけ、舟の中の水を船尾からはきだすのだ。走行中の安定性を犠牲にして、転覆を恐がれずに走り続けるスピード重視の発送。海に投げ出されても作業がくにならない、水温が暖かい暖流の地域の特質であろう。
●南の海のスポーツカー
サバニの前部には、舷側板を押しひろげて支え、帆柱を通して固定する四角い穴があけられたウシカキーという横木がある。海がしけたときには、わざと舟を裏返しにさせて、つかまって舟の中の空気を呼吸しながら波のおさまるのを待つ。漁のときには、網をしばったり、釣ったフカをひきよせて、棍棒で叩くときにも重要な役割をする。
帆はマングローブ林のヒルギ科の植物の実を煎じた汁と澱粉をまぜた液につけて腐食を防いだ木綿でつくられている。ウシカキーの下のハイウミシーには、帆柱を受け、帆柱の角度が変えられるように3つの穴があいている。通常は垂直に、風の弱いときには前傾、強いときには後傾といったぐあいだ。帆柱の立て方が簡単なだけに、風と対話していくなかで、即座に対応できる。帆柱の角度と手綱による帆の面積の増減によって帆走するサバニだが、帆の操作は大変むづかしく、現在でも帆走できる熟練者はわずかだといわれる。
糸満ではフカのことをサバという。諸説ある語源のひとつに、サバ漁にもちいる舟(サバブ=サバニ)というものもある。海人はサバニに帆をかけて、スピードにものをいわせてフカとの壮烈な闘いにくりだしていったのだ。 海人の誇りを象徴するサバニ。そのスピード、操作の難しさ。まるで、選ばれた者だけが乗る南の海のスポーツカーのようだ。
サバニの前部には、舷側板を押しひろげて支え、帆柱を通して固定する四角い穴があけられたウシカキーという横木がある。海がしけたときには、わざと舟を裏返しにさせて、つかまって舟の中の空気を呼吸しながら波のおさまるのを待つ。漁のときには、網をしばったり、釣ったフカをひきよせて、棍棒で叩くときにも重要な役割をする。
帆はマングローブ林のヒルギ科の植物の実を煎じた汁と澱粉をまぜた液につけて腐食を防いだ木綿でつくられている。ウシカキーの下のハイウミシーには、帆柱を受け、帆柱の角度が変えられるように3つの穴があいている。通常は垂直に、風の弱いときには前傾、強いときには後傾といったぐあいだ。帆柱の立て方が簡単なだけに、風と対話していくなかで、即座に対応できる。帆柱の角度と手綱による帆の面積の増減によって帆走するサバニだが、帆の操作は大変むづかしく、現在でも帆走できる熟練者はわずかだといわれる。
糸満ではフカのことをサバという。諸説ある語源のひとつに、サバ漁にもちいる舟(サバブ=サバニ)というものもある。海人はサバニに帆をかけて、スピードにものをいわせてフカとの壮烈な闘いにくりだしていったのだ。 海人の誇りを象徴するサバニ。そのスピード、操作の難しさ。まるで、選ばれた者だけが乗る南の海のスポーツカーのようだ。
転覆と復元
サバニはアウトリガーを付けていない分転覆しやすい。しかし、転覆して裏返ったときには逆に不安定になり、また、船底が重いため容易に元にもどせる。
サバニはアウトリガーを付けていない分転覆しやすい。しかし、転覆して裏返ったときには逆に不安定になり、また、船底が重いため容易に元にもどせる。
- A.
- 転覆時には、裏返った舟の中に入り、ウシカキー
(横木)や三角形の船尾部分をつかまって元に戻す。 - B.
- 海水がはいったまま、船首を直角に立てて大波を
待つ。 - C.
- 船尾に体重をかけて船尾を高くあげると、海水の
多くは船尾板から自然に排水されていく。 - D.
- 舟に乗り込み、ユートゥイ(水くみ)で残った海水を
かきだす。ユートゥイの底は丸みがかり、
底にぴったり合う。