太平洋への旅は紀元前三千五百年ほど前に中国東南部を起源に、台湾を経由して始まりました。アウトリガーの発明により、外洋での航海が可能になったようです。 遠い昔、人々はどんな知恵をもって、この壮大な航海をやってのけたのでしょうか。そこには、現代科学の物差しでは測り得ない、我々が既に、なくしてしまった、我々の尺度では想像できない人間の力があったはずです。
沖縄の人々の中にも、そういった力を受け継いでいる人々がいました。沖縄の海人は、つい30年ほど前迄、帆走するサバニで、漁をするため、物資を運ぶため、広大な海を自由に行き来していたのでした。
六年前、このサバニを復活させようというイベントが実現しました。地元の海人を中心に、那覇市や、座間味村の協力も得て、毎年、梅雨の明けたばかりの夏至南風をとらえ、座間味から、30数キロ先の那覇港を目差しています。
今年も、太古の昔から伝わるネイティブの知恵を絶やさないために、昔、ブタの血で染めたといわれる赤いセイルに風を孕ませ、座間味から那覇までのレースが行われます。