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TOP > コラム > シリアス・レジャーの特徴を持つ海洋スポーツイベントに関する研究―慶良間海峡横断サバニ帆漕レースの参加者を対象とした調査―
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3.結果

回答は19チーム64名(男性43名,女性21名)から得られた。回答者は50歳代が20名と最も多く,次いで 40 歳代が18 名であった。沖縄県居住者41名(64.1%),沖縄県居住者のうち座間味村21名(32.8%),本島16名(25.0%),座間味村以外の島部4名(6.3%),沖縄県外居住者23名(35.9%)であった(表1,図1)。レース初参加は6名(9.4%)であり,参加者の90%以上は複数回のレース経験者であった。参加回数は2〜 4回が32名(50.0%)と最も多く,次いで5〜 8回(11名・17.2%),9〜12回(8名・12.5%)であり,第1回から全て参加している回答者は1名であった(図2)。

サバニの保管場所については,レースのスタート地点である座間味島に保管していると答えた回答者が36名(56.3%)と最も多く,次いで沖縄本島(糸満市)13名(20.3%),沖縄本島(糸満市以外)4名(6.3%),葉山と沖縄4名(6.3%),慶留間島2名(3.1%),西表島2名(3.1%)であり,沖縄県外から参加するチームも座間味島をはじめとする沖縄県内にサバニを保管していることが示され,また沖縄県内であっても座間味村以外の諸島部からサバニを運搬しレースに参加していることが明らかとなった(図3)。

レースに関わる満足度では「@ 20回大会全体」「A レース運営」「B プレ(島内)レースコース」「C 本レース(座間味島〜那覇)コース」「D レースに関するルール」「E 申込み方法」「F レース開催時期」「G レースに関する情報発信」「H 参加者間の交流」「I 座間味島民との交流」「J 前夜祭」「K 表彰式」「L サポーターまたは観戦者の応援環境」「M 協賛企業らによる取り組み(ビーチクリーン)」の14項目について回答してもらい,結果を図4に示した。「@ 20回大会全体」「A レース運営」「C 本レース(座間味島〜那覇)コース」「F レース開催時期」「J 前夜祭」「K 表彰式」「M 協賛企業らによる取り組み(ビーチクリーン)」については,回答者の半数以上が「非常に満足」もしくは「やや満足」と回答している。特に台風等による海象悪化によるコース変更を除き,第1回から変更されることなく設定されている座間味島〜那覇間の約36kmにわたる海峡横断コースについては,満足度が非常に高いことが示唆された。また,「E 申込み方法」「G レースに関する情報発信」「L サポーターまたは観戦者の応援環境」については満足度が高いとは言えず,情報の周知や広報に関して改善が必要であることが窺えた。
表 1 回答者の属性、図 1 回答者の居住地、図 2 サバニ帆漕レース参加回数


図 3 サバニ保管場所


図 4 参加者満足度
直近に参加したサバニ帆漕レースにおける滞在期間のうち,スタート地点である座間味島での滞在期間は,座間味島居住者を除くと2泊3日(21名・32.8%)が最も多く,次いで3泊4日(9名・14.1%),1泊2日(7名・10.9%)であった。最も長く滞在する回答者は,県外からの参加者で4泊5日(4名・6.3%)であった。サバニ帆漕レースではサバニに乗船しないメンバーも伴走艇にて島を後にするため,レーススタート後に座間味島内に宿泊することは考えられず,レース5日前から島内にて整備や調整を行ってレースに臨んでいることが示された。

また,レース前後における沖縄本島での滞在については,前・後泊する参加者が最も多く(21名・32.8%),次いで宿泊しない(20名・31.3%),後泊のみ(18名・28.1%)であった。最も回答が多かった前・後泊するという回答者は,すべて県外からの参加者もしくは沖縄県諸島部(久米島・西表島)であった。本島にて宿泊しないという回答者は,本島および座間味島居住者であり,後泊のみの多くは座間味島居住者であった。
図 5 レースにおける滞在期間(座間味島(左)・沖縄本島(右))
サバニ帆漕レースへの参加を決めた理由およびサバニ帆漕レースの魅力についての自由記述での回答から,質的データ分析手法であるSCAT(Steps for Coding and Theorization)を用いてカテゴリーを生成した。回答として得られたテクストは「 」,テクストから生成したカテゴリーを〈 〉で示す。サバニ帆漕レースの参加を決めた理由として8個のカテゴリーが生成された。「勝ちたいから」「漕ぐことが大好きだから」といったレースもしくは動力のない舟艇で海に出る行為自体を示唆した〈アイデンティティ〉,「地元のイベントだから」「メンバーに誘われた」と沖縄県居住者が多く回答していたように〈サバニ文化が身近にあった〉こと,「昔の(エンジンのない)サバニが好きだから」といったサバニという舟艇そのものに魅力を見いだしている〈サバニの魅力〉,「サバニを所有することができた」といったレースに参加するための〈環境が整う〉ことでレースへの参加が叶ったという回答も見られた。また,「小舟で海峡横断する,冒険的で刺激的な要素を持っていること」といった慶良間海峡を横断する活動に内包される〈自然環境に対する魅力〉,「チーム皆で漕ぎ,海を渡りたい」といったチーム一丸となって同じ目標に向かい,達成感を共有できる〈チームとしての楽しみ・挑戦〉,「ゴールした時の達成感がたまらない」,「自然のなかに小舟で出ることを単純に楽しみたい」といった〈個人としての楽しみ・挑戦〉,「愛好家同士の懇親」といった〈レースに付随した楽しみ〉のカテゴリーを示すことができた。

表2 サバニ帆漕レースへの参加を決めた理由(SCAT 分析による)

カテゴリー テクスト
アイデンティティ 勝ちたいから
男のロマン
漕ぐことが大好きだから
サバニ文化が身近にあった
(座間味・糸満居住者)
舵取りが居なくて困ってたチームだったから
連続して出場しているから流れで参加
地元イベントだから
伝統船のレースが地元でやっているから
面白そうだったから
みんなで那覇まで漕ぐことが楽しそうだった
区民あげての行事のため,お世話になった島への帰島も兼ねて,島を盛り上げたい
後輩からの誘い
久しぶりに出られたから
サバニの魅力 昔のサバニが好きだから
サバニに乗る目標の通過点として
環境が整う サバニを所有することができた
自然環境に対する魅力 継続的に参加していること
小舟で海峡横断する,冒険的で刺激的な要素を持っていること
前島の潮目と勝負するため
レースが好きというより,自分達の力でサバニで慶良間横断をしてみたかった
自然のなかに小舟で出ることを単純に楽しみたい
海の楽しさがつまったレースだと感じるので
チームとしての楽しみ・挑戦 チームで完走を目標に参加
チームで楽しくサバニを漕ぎたかったから
チームイベント
クラブのみんなとレースに参加することに意義があるから
チームメンバーの出場したいという意思
チーム皆で漕ぎ,海を渡りたい
個人としての楽しみ・挑戦 楽しいうえに達成感もあるから
毎年の楽しみであり,このレースのために1 年間積み重ねてきたので参加しない理由がない
楽しいから
自分の海の世界を広げるため
ゴールした時の達成感がたまらない
常に参加して楽しかったから
毎年参加する事に喜びを感じている。古式サバニのカテゴリーでの優勝を目指して
過去二回出たレースでやりきれていないことがあった
以前リタイアしたので
レースに付随した楽しみ 愛好家同士の懇親

表3 サバニ帆漕レースの魅力(SCAT 分析による)

カテゴリー テクスト
イベント性 年1回の帆掛サバニの祭典
年に一度の原点回帰
景観 海の美しさ
沖縄の海・自然に直接触れることができること。サバニを漕ぐことで,沖縄の海(波や流れ,美しさ,厳しさ)を体感することができること
古座間味ビーチの美しさ
自然への理解 人と海と風
海のもつ力,楽しさ,厳しさ,美しさ等々を知ることができる
自然の強さや怖さを有難さ教えてくれるもの
サバニそのものの魅力 ものすごく原始的な船で風と人力を駆使して海を渡るという至極シンプルな所
自然に試される
サバニの凄さ
人力と風力だけのシンプルな点
風とパドルで本島までレースをすること
帆と櫂の人力で船を操船することサバニ自体の漕力に興味がある
あの海原のウネリの中,風を取りサバニを漕ぐ。舟と皆んなが一体になる
艤装の準備
サバニという琉球地方の文化に直接的に触れることが可能であること。サバニレースに出ることで,サバニを理解し,操船技術を向上させることができること
伝統サバニで青い海にいること
沖縄の伝統を楽しめるところ
伝統文化とスポーツイベントの融合
恵まれた環境の中,伝統を次世代に生かすために競技へと昇華した貴重性や取り組み
沖縄伝統の船を世界に発信でき地元の子供たちが帰ってくるきっかけになる
温故知新
サバニを通じた共感性 海へ関わる事を日々欲している生活の中で,普段違う事をしている仲間と35q漕破を目指し,成し遂げる達成感が一番の魅力,時間を共有出来る楽しみ
ゴールした時の達成感。チームメイトとの一体感
サバニに一緒に乗り,帆漕することで,仲間意識や共感性が高まること。何より,美しいこと
他チームであってもサバニという共通点を持ちシーマンシップを強く感じることができること。同じ海況をそれぞれのサバニで同じ苦しさや苦悩,工夫を経験し,それを共有できる雰囲気があること
チームワーク 慶留間島民みんなでの協同
力を合わせて過酷なレースを乗り越えること
レースに勝つことというよりは,島の人々と一緒に一つの目標(無事に那覇に着く)に向けて一丸となって取り組めるところ
チームの和
チーム(複数人)で1つのもの(サバニ)を動かすという面白さ
クルー全員でやり遂げること
サバニの管理,フーや,フー柱など自分達で考え工夫して作りや,サバニ好き方々と渡る綺麗な海をサバニで渡られること
1年掛けて,練習,船のメンテナンスして,チームワークで海を渡る達成感
チームワークであの海峡を漕ぐこと
仲間との交流 自分たちのチームの仲間とサバニに乗る他の仲間との交流
サバニに乗る原点を気づかせてくれること
いろんな人たちと交流できる
地元,県外の人との合流の場ができる
仲間との絆が深まる
漕ぐだけではない楽しさ
目標(完走)到達と愛好家同士の懇親
サバニを通じて,たくさんの海を愛する人々と出会うことができること。サバニを通じて,座間味島の人々との関係を深めることができること
非日常的な体験 36キロも舟を漕ぐという非日常感
貴重な体験
仕事,家族,地域などの日常とは別の楽しみ 非日常
達成感 ゴール時の達成感
外洋を渡る達成感
冒険的要素 一度として同じ状況がない。風向,風力,海面状況,波の高さ,流れの速さ,メンバーの技量。その時々の状況
判断が試される。どこまで。何をするか。何ができるか。これが魅力かも
大海原を風と人の力だけで進むこと
自然への挑戦
自然と向き合うこと
海を渡ること。伴走船がなければ,なおよい
自力で那覇まで行く爽快感
自然との共生
自然に揉まれること
仲間と自然の力と想像力
自然を感じ海の怖さも知ることができる
いつも船で渡っている那覇までをサバニで漕ぐということ
海峡横断するという冒険的な体験ができること
サバニ帆漕レースの魅力は,「年1 回の帆掛けサバニの祭典」と言われる〈イベント性〉,スタート地点である座間味島を含む慶良間諸島の「海の美しさ」や「沖縄の海(波や流れ,美しさ,厳しさ)を体感できること」といった〈景観〉に関する記述,「自然の強さや怖さ,ありがたさを教えてくれるもの」といった〈自然への理解〉,動力のない伝統船で大海原へ出るという「ものすごく原始的な船で風と人力を駆使して海を渡るというシンプルなところ」のような〈サバニそのものの魅力〉,「他チームであってもサバニという共通点を持ちシーマンシップを強く感じることができること」やチームでゴールを目指して漕ぐことにより感じられる〈サバニを通じた共感性〉,船のメンテナンスなどを通して得られるサバニへの愛着と「チームで1 つのものを動かすという面白さ」から得られる〈チームワーク〉,サバニを通じて愛好家同士の輪が広がる〈仲間との交流〉,「36キロも舟を漕ぐ」という〈非日常的な体験〉や様々な困難を乗り越えてゴールしたときの〈達成感〉,そして慶良間海峡の海を「大海原を風と人の力だけで進む」〈冒険的要素〉の10個のカテゴリーが生成された。